料理のスパイスや香り付けなどに使われていて、今や私たちの暮らしに欠かせない存在のハーブ。香りや味、刺激がある植物の事を食用の世界では香辛料と呼んでいますが、その中でも茎・葉・花を利用するものを「ハーブ」と定義しています。
実は、ハーブは古代エジプトでミイラの防腐剤として使われていたといわれているほど、効能が高い事で知られています。
ここではハーブの中でも
・オレガノ
・タイム
・ローズマリー
・セージ
の4種類のハーブの特徴や効果、使い方をご紹介します。
1.オレガノの名前の由来
オレガノの学名「Origanum」は、ギリシャ語の「oros ganos(山の喜び)」が語源となっており、幸福のシンボルとされています。
和名では花薄荷(ハナハッカ)と呼ばれています。
2.オレガノの特徴
オレガノは、地中海沿岸原産の多年草です。シソ科でスッキリとした強い香りをもち、その香りの強さはハーブの中で最も強いといわれているほどです。
また、オレガノは乾燥させることで香りが強くなると同時に青臭みがとれてさらにシャープになるので、料理用には乾燥オレガノが好まれています。
胡椒にも似た刺激的な風味で、料理に使うとスパイシーであたたかみのある風味をプラスするため、煮込み料理や肉の臭み取りにも利用できます。
3.オレガノの効果
花言葉の一つに「あなたの苦痛を除きます」という言葉があるとおり、オレガノの葉や茎には鎮静作用や殺菌作用があり、古代ギリシャ・ローマの時代から風邪薬や頭痛薬として使われてきました。
胃腸の調子を整える効果もあるので、食べすぎた時は消化促進としてハーブティーで飲むのも良いでしょう。
また、オレガノにはロスマリン酸というフェノールが多く含まれており、抗酸化作用が高いことがわかっています。抗酸化作用が高いことから、オレガノはアンチエイジングや免疫力の向上、高血圧や動脈硬化の予防が期待できることが、アメリカ合衆国農務省(USDA)の研究によって明らかになっています。そしてオレガノには強力な抗菌作用もあり、その有効性は薬剤と比較しても遜色ないとされています。
4.オレガノの使い方
生葉のオレガノは乾燥よりマイルドな味と香りで、そのままハーブティーや料理にも使えますが、一般的に市販されているオレガノはドライ(乾燥)のものが多いです。
ドライのオレガノは、お肉やトマトなど味の濃いものと合わせると素材の味を引き立てるのでおすすめです。
ただし、香りが強くひとつまみでも料理の香りを変えてしまうので、少しずつ入れていくのが良いでしょう。もちろんハーブティーとしても利用できますし、入浴剤としてお風呂に入れるとリラックス効果が高いとされています。
また、花はポプリやドライフラワーに活用できるので、全草を無駄なく楽しめます。オレガノのポプリは枕に入れると安眠効果も期待できますよ!
1.タイムの名前の由来
原産は地中海沿岸で、タイムという名前はギリシャ語で勇気を意味する「Thymon」に由来するといわれています。
小さな葉ながらも気品ある香りを持つことから、人間の能力を高めるはたらきがあるといわれ「勇気」や「大胆さ」の象徴だと言い伝えられ、「聖なる魅力的なハーブ」リストにもトップに挙げられています。
2.タイムの特徴
タイムはシソ科に分類され、多くの小枝を分岐する常緑多年草です。大きくなっても30〜40センチ程度ですのでとてもコンパクトなハーブです。ハーブの中でも特に種類が多く、350種類を超える品種がありますが、最もよく使われるのはコモンタイムという品種で、清々しく気品のある香りが特徴的です。
タイムは病害虫に強く、寒さや暑さにも強いことも特徴の一つで、薬草として人類が古くから利用してきた植物で歴史あるハーブです。ギリシャ人にとってタイムは優雅さや勇気、気品を意味するもので「古代ギリシャ人はお香として焚くことで神殿や家を清めた」「貴婦人は戦いに出る騎士にタイムの小枝を縫い付けた絹のスカーフを贈って励ました」など、タイムにまつわるエピソードは多く存在します。
3.タイムの効果
タイムの茎や葉に含まれている「チモール」という成分は、強い殺菌作用と抗菌作用があり、古代エジプトではミイラを作る際の防腐剤として利用されていたそうです。
また、タイムには鎮痛作用があるため、喉の痛みを鎮めたり声枯れを改善したりする効果が期待できます。消化促進効果や、血行を良くしてめぐりをよくする効果も期待できます。
4.タイムの使い方
タイムは繊細さを持った品のある香りでどんな素材も引き立てる力があり、魚や肉などと相性が良く、煮込み料理やスープ、香草焼き、ムニエルなどによく使われます。特に魚との相性が良いことから「魚のハーブ」と呼ばれています。
料理以外にも、暮らしの中でタイムは様々な使い方ができます。まず、タイムを濃く煮出したハーブティーをうがい薬に利用できます。タイムに含まれるチモールという成分の殺菌作用が風邪や口臭予防に役立つので、おすすめの使い方です。また、全身浴や足湯にタイム大さじ3をパックに詰めたものを浮かべると、タイムの血行促進効果により身体のめぐりが良くなります。
タイムの香りは精神的疲労を和らげるといわれているので、携帯できるサシェにして持ち歩くのも心身を落ち着かせるのに効果的です。
1.ローズマリーの名前の由来
ローズマリーの名前の由来には2つあります。
1つは、花姿を「海のしずく」に例えてラテン語の「ローズ(しずく)」「マリナス(海の)」が合わさったという説です。もう1つは、聖母マリアを象徴する花がローズであることから「ローズ・オブ・マリー」が由来という説です。
なぜ聖母マリアが関係するのかというと、聖母マリアが衣を被せたところ白いローズマリーが青くなったという言い伝えから誕生したとのことです。
2.ローズマリーの特徴
ローズマリーは集中力・記憶力を高めるハーブとして知られており、花言葉も「記憶」で紀元前4-5世紀頃の古代ギリシャでは、学生たちが髪にローズマリーの小枝をさして勉強したというエピソードがあるほど、記憶の象徴として古くから使われていたそうです。
また、病を患っていたハンガリー王妃がローズマリーとライムから抽出した治療水を使い出したところ健康になり若返り、72歳のときに20代の王子からプロポーズされたという逸話もあり、ローズマリー水は「若返りの水」という異名を持っています。
3.ローズマリーの効果
ローズマリーは健康と美容の両面において様々なメリットのあるハーブです。
まず健康面では、ローズマリーの主成分であるカルノシン酸は、神経細胞の維持に重要な役割を果たす神経成長因子の生成を高めるという報告がされており、記憶力を改善する作用が期待できます。また、抗酸化作用の高いロスマリン酸には、花粉症の症状を和らげる作用があることがわかっています。
ローズマリーの爽やかな芳香により頭をスッキリさせ目覚めさせてくれる刺激もあります。
美容面に関しては、ローズマリーに含まれるウルソール酸は抗炎症・抗菌・抗ウイルス・抗酸化作用があるため、気になる肌荒れにはたらきかけます。また、タンニンというポリフェノールの一種も含まれており、綺麗をキープするために嬉しい成分で肌の引き締め効果が期待できます。
4.ローズマリーの使い方
羊肉、豚肉、イワシなどクセの強い素材の臭み消しに役立つ一方、鶏肉、じゃがいもなど淡白な素材の風味づけにも活躍するローズマリー。料理以外にも、美容、芳香剤、薬用など幅広い用途で使えます。
美容では、肌荒れをカバーする効果があるので、ローズマリー軟膏は「魔法のクリーム」と呼ばれ、若返り効果が期待できると口コミでも評判になっています。またローズマリーの葉から抽出される精油は潤いを与えるので、ボディーローションや頭皮のマッサージオイルなどに使われています。
薬用に関しては、ローズマリーの葉の浸出液がリウマチや外傷などで外用されたり、消化不良などの内用にも使用されています。
1.セージの名前の由来
セージは学名をサルビアといい、この名前はラテン語で「サルバーレ(治療)」から由来されています。その名前の通り、古くから薬用として治療に用いられてきたハーブの一つです。
また、一説ではセージは「ソーセージ」の語源といわれており、それは英語で雌豚を意味する「Sow(ソー)」とソーセージに欠かせないハーブの「Sage(セージ)」が組み合わさったとのことから名付けられています。
2.セージの特徴
シソ科の多年草で、地中海が原産です。セージは、ヨーロッパでは古くから健康や家庭の幸せの象徴として重宝されてきました。古いアラビアのことわざでは「庭にセージを植えているものが、どうして死ぬことができようか」など、セージは不老や長寿とも結びつけられています。
セージには様々な種類があり、一般的な品種の「コモンセージ」や「ホワイトセージ」「スパニッシュセージ」などが食用や薬用でよく使われています。セージの香りはよもぎに似た爽やかな強い芳香とほろ苦さをもち、少し薬臭いと感じる方もいるようですが、脂っこいメニューと相性が良く香りの強い肉料理の臭み消しなどに使われている優秀なハーブです。生葉より乾燥させたものの方が香りが強くなります。
3.セージの効果
セージは他のハーブ・スパイスと比べて強力な抗酸化作用を持っています。この強い抗酸化作用が身体の老化を抑えるため、セージを不老長寿のハーブと呼ぶのも納得ですね。
また、そのほかにも
・抗菌、抗ウイルス作用
セージでうがいをすると、風邪や感染症予防、歯肉炎や口内炎の症状緩和に役立つといわれています。また、喉の痛みや腫れ、水虫のケアにも利用できます。
・お肌の引き締め効果
収れん作用や発汗を抑える作用があり、お肌の引き締めにも利用できます。
・強壮効果、免疫力アップ
中国医学では神経系の強壮薬として評価されており、血液循環が良くなるといわれています。血行が良くなることで免疫力向上も期待できます。
・消化促進
セージの消化を促す作用により、腹痛や胃が荒れている時などに消化器の筋肉をリラックスさせて症状を緩和させます。
4.セージの使い方
肉料理や魚料理・脂っこい料理をスッキリと仕上げるために、その爽やかで強い芳香が重宝されるセージ。肉の臭み消しや風味づけに効果的なだけでなく、セージの胃腸にやさしい作用によって消化を助ける効果も期待できます。
暮らしの中での利用法は、
・風邪予防にセージうがい薬
・血行促進や水虫予防にセージ足浴
・防虫のためのセージサシェ
・抗菌性を利用しセージの葉を挟んでおしぼりにする
などが挙げられます。
この記事は管理栄養士の方に執筆していただきました。
小玉奈津実
サプリメントの商品開発や施設の献立作成などの経歴を持つ管理栄養士。現在はフリーの管理栄養士として活動中で、主に栄養指導やコラム執筆や監修を行う。得意分野はダイエットや正しい食事指導、腸活や美容関連など、食を通じて内側から美しくなる事を発信中!食品表示検定中級も保持しており、日頃から様々な商品の原材料表示をみて分析するのが趣味の一つ。